「ライフシフトと私」― 100年時代を生きる、もう一つのキャリアのかたち #5
第5回:変わる勇気と、“変身資産”の育て方
― 『ライフシフト』で学んだ「自分を更新する力」
「変わることは、難しい」
年齢を重ねるごとに、そう感じる場面が増えてきました。新しいことに挑戦する前に、「もう今さら」とブレーキをかけてしまう。慣れた環境に身を置いていた方が、居心地はいい。でも、ほんの少しの違和感が、心のどこかに残り続けるのです。
『ライフシフト』の中に、「変身資産(Transformational Assets)」という概念が出てきます。
これは、人生の節目や環境の変化に対応し、自分を再定義・再構築するための“力”のこと。最初にこの言葉を読んだとき、「これはまさに今の自分に必要なものだ」と直感しました。
変身資産は、持って生まれた性格ではありません。
経験のなかで育て、鍛えることができるものです。
たとえば、私が資格試験に挑戦したのも、今までの「会社員としての自分」を少し外側から見つめ直し、新しい自分像を模索したいという思いがあったからでした。
振り返ってみると、「変身資産」を育てる鍵は、次の3つだったように思います。
- 小さく始めてみる勇気
すべてを変える必要はありません。読書、学び直し、知らない人との対話――どれも、小さな一歩です。 - 失敗を許す柔らかさ
新しい挑戦には、うまくいかないこともつきもの。完璧でなくていい、やり直せばいい。そう思える心の余裕が大事です。 - 過去にしがみつかない意志
これまでの経験は貴重です。でも、それに縛られて身動きが取れなくなるなら、新しい枠組みを自分でつくる時期かもしれません。
「私はこういう人間だから」と思っていた自分を、ふと横から見つめ直す。
それはときに怖く、そして、とても自由な感覚でもあります。
変化は怖い。でも、変わらないままでいる方が、もっと怖い。
そう感じるようになってから、私は「変わる」ことが少しずつ楽しくなってきました。
次回予告:
第6回では、人とのつながり――“ソーシャルキャピタル”がもたらしてくれる価値について綴ります。